賃貸管理会社への提言

アパート・マンション経営

賃貸管理会社への提言|コンセプト特化型 or 自主管理サポート型

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宅建士/AFP/PMP®など。不動産オーナー向け教育事業、東京大家塾(2006年〜)や不動産実務検定®認定団体J-REC理事・東京第1支部長・認定講師(2008年〜)として累計3万件以上の不動産投資・活用・トラブル相談の経験から失敗しない不動産活用を体系化。Google★4.8/215件〜・Udemy講師★4.2/972名〜・ココナラ個別相談★4.9/123件〜。著書/共著17冊・講演実績全国25団体〜・寄稿/取材協力多数。

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いよいよ2015年。いよいよ、というのには意味がある。
70年周期説をご存知だろうか。およそ70年ごとに価値観や世の中の構造が劇的に変わることを繰り返してきたという説だ。今から70年前は、太平洋戦争(1945前後)。その前は、明治維新(1875年前後)。
こうした歴史から学べること。それは、これまでの価値観がひっくり返ることだ。

新築プレミアムの崩壊

まずは入居者の価値観がひっくり返ることについて考えてみよう。
それは、新築プレミアムの崩壊だ。以前ほどには、新築に価値を認めてもらえない。それどころか、古い物件を求める人が増えつつある。
彼らは、画一的な新築の部屋よりも、自らDIY(自分でリフォーム)することで、自分たちの好きなような空間を作ることに、価値を認めるだ。この流れはには注目したい。

業界主導から大家主導へ

続いて、賃貸管理業界の価値観がひっくり返ることを考えてみよう。
それは、業界主導による画一化された賃貸管理から、大家主導による多様化された賃貸管理になることだ。
なぜなら、ほとんどの業者は管理物件を満室にできないからだ。

業者は満室にできない

現在の賃貸管理システムは、新築も築古も、駅近も駅遠も、マンションも戸建も、すべて同じフォーマットに押し込めている。
そして数値上、競争力のある物件から順番に入居者が入り、競争力の劣る物件は空室のままとなる。
ここで業者は「競争力に劣る物件をなんとかしよう!」とはならない。
そんなことをしなくても、空室の物件で競争力のある部屋から順に紹介することで売上になるからだ。

満室にしても評価されない

物件ごと・大家ごとに、満室戦略を立案・実行するには、今までにないノウハウを学ぶ必要がある。さらに、大家との打ち合わせに時間が取られる。しかし、そうまでして満室にしても、大家からの評価は「当然だ」で終わりだろう。
であれば、売上を増やすのに、次から次へと湧き出る空室を埋めることを選ぶ。良い・悪いではない。利益を追求する組織として当然のことなのだ。

覚醒する大家たち

業者に任せていても私の物件は満室にならない! どうしたいいのだろう?
今時の大家なら、ちょっとネットで調べれば、いろいろな空室対策の書籍があることに気がつく。そして、業務の仕組みが体系的に学べる不動産実務検定なるものがあり、各地に大家の会や大家塾なるものを見つける。
そうして様々な知識や事例を学び行動に移していくのだ。

行動する大家たち

まずは物件の近くにある仲介会社に自ら営業に出向く。さらに、例えばフリーレント・自転車プレゼント・入居祝い金プレゼント・壁紙選び・家具家電付きなどのキャンペーン行う。ほかにも、ペットOK・外国人OK・ルームシェアOKなど、運営ルールも見直す。
さらには、お客様に「ここに住みたい!」と指名されるようなコンセプトを作る。
例えば、ダイエットする女性を応援する・シングルマザーを応援する・資格取得を応援する・大学の勉強を応援する・オタクライフを応援する、そんな物件のことだ(すべて実在)。
こうしたコンセプト型賃貸を、私は「課題解決型賃貸」と呼んでいる。前述のDIY賃貸もその一つだ。入居者の自己実現・自己表現を応援するコンセプトなのだ。
こうなると、立地や築年数は、二の次三の次になることが期待できる。

大家が好む業者・嫌う業者

こうした大家の取り組みを歓迎し、大家ができない部分を積極的にサポートしてくれる業者は、大家に好まれる。
だが、多くの業者はこの手のタイプの大家には困るものだ。
なぜなら、物件ごと・大家ごとにルールが異なると、仕事が複雑になるからだ。
確かに、一つ一つの業務は大したことはない。だが、業者のスタッフが、業務の煩雑化に追いつけない。そして、スタッフのココロやカラダが耐えられなくなる。
そこで経営者は「大家さん、そういうことはやめてください。」と言わざるを得ない。
しかし、大家からは「だったら早く満室にしてください」と言い返されるだけだ。そこでお互い妥協することになるのだが、お互いストレスを溜め込むつらい状況が続くことになる。
ここに従来の業界システムの限界があるのだ。
では、この限界を突破するには、どのように対応すればよいのだろうか? 私は、2つのスタイルがあると考えている。

コンセプト特化型賃貸管理

一つ目は、コンセプト特化型(ペット可物件専門・楽器可物件専門など)だ。
業者は、特定の専門性のあるコンセプトでお客様を集客する。物件には、独自のノウハウに基づき、設備を導入したり、運営ルールを適用したりする。
大家にとっての難点は、どんな物件でもOKとはならないことだ。そのコンセプトに合った立地や間取りなどの基準を満たす必要がある。

自主管理サポート型賃貸管理

二つ目は、自主管理サポート型だ。
これは業者にしかできないサービスだけを行い、大家が自らできることは自らやってもらう、または直接、専門業者と契約してもらうスタイルだ。
ここでいう業者にしかできないサービスとは、仲介(契約)業務、滞納保証会社の取次、ポータルサイトの掲載などだ。それ以外の業務、例えば入居者とのやりとり、定期清掃などは行わないい。大家が自分で対応するか、専門業者と直接契約すればいいだけだ。
これならば、大家が自らコンセプトを作ったり、独自の運営ルールを作ったり、自由に満室戦略を立案し、実行することができます。管理会社としては関与しない。
なお、大家にとっての難点は、満室にできるか、維持できるのかどうかは、すべて自己責任になることだ。もっとも事業なのだから当然のことだ。

賃貸管理業のスタイル

賃貸管理業のスタイル

まとめ

いかがだっただろうか。業界や業者側の都合に、大家や入居者を押し込むのは時代の流れに逆行している。
かといって、物件や大家ごとに満室戦略を立案・実行することはできない。
これからの賃貸管理業は「すべてお任せ下さい」ではない。「この分野はお任せください。ですが、この分野はできません」となる。
御社はこれから、何に特化して何を捨てるのか、ぜひ考えてみてほしい。

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