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あなたやご家族が個人不動産オーナーで賃貸業をされていて、もし銀行(金融機関)から節税(主に所得税)のために法人化の提案があったら注意してください。
主に、東京大家塾の会員さんから、私からすると法外な経費の提案書をいくつか見てきました。
実は、法人化そのものは決して難しいものではありません。
恐らく、高級官僚(?)や政治家の多くは(本人がやるのはマズイので)一族としてやっていることでしょう。
ちなみに、政治家はさらに別のスキームで節税(所得税・法人税はもちろん消費税も相続税も)していますが、ネットで公表して広まってしまうとやりづらくなりますので秘密です。1
まずは、法人化の基本を整理します。
不動産賃貸業の法人化とは?
個人で所有している不動産を法人に移転(実務上は売買契約)することで、個人の所得税の節税や相続税の節税を考えるときの1つの選択肢となります。
法人化のメリットとは?
節税と一口にいってもいろいろありますので分けて説明します。
税率・税区分が有利
個人の所得税と法人の法人税は、税率も税区分も異なります。単純に、同じ所得金額(売上-経費)でも個人と法人と比較すると法人のほうが税額は少なくなります。
給与所得控除を複数人で使える
不動産収入を法人に入れて、そのお金を個人に移転するときには役員報酬の形となります。
このとき、役員報酬といっても「給与所得控除」が使えます。給与所得控除とは、支出していない金額なのですが、給与を得るのにこのくらいの経費は掛かっていますよね、と勝手に経費として認めてくれる金額のことです。最大で1,950,000円が経費になる=所得が減る=所得税が少なくなる…とできます。
そして、これを家族など複数人で使います。家族を法人の役員にすればいいだけです。そうすると、最大で1,950,000円×人数分を課税されないようにできます。
役員報酬の調整で納税金額をコントロールしやすい
不動産賃貸業や売上(不動産収入)の予測がしやすいので、役員報酬の調整=利益調整(←対税務署には禁句)がしやすい業種です。
ちなみに、役員=経営責任者…なので、原則、その責任の分だけ労働時間に関係なく役員報酬を設定できます。
あくまで原則なので、事務所に出社もしないし会議に出席もしなし経営を判断する能力や経験がなさそう(ずっと専業主婦だとか)のに月収1億円…みたい報酬は否認(法人の経費として認めない)される恐れがあります。ちなみに、いくらまでなら大丈夫…という明確な線引はありません。
経費化できる範囲が広がる
そもそも経費とは何でしょうか? それは売上に貢献する支出のことです。
そのため、個人の場合は経費と生活費(家事費)を明確に分けることが実務上、難しいものです。法人化すれば、法人名義で契約したものは基本的に経費にできます(もちろん個人利用を兼用している場合は按分すべき)。
また、例えば、個人の不動産オーナーでは自動車を経費にすることは難しいと思われます。なぜなら、売上に貢献しないからです。
そうはいっても「物件を見に行くのに必要」「管理会社で打ち合わせをするのに必要」との意見もあるでしょう。しかし「管理委託やサブリースしているなら物件を見に行く必要ありませんよね。実際に行った証拠を出してください。管理会社の打ち合わせいっても電話や逆に向こうが自宅に来訪されているのではありませんか?」と突っ込まれたときに反論できるだけの用意が必要です。
ほかにも接待交際費も同じ理由です。
また、経営セーフティ共済や生命保険を活用した節税目的の商品など、法人だからこそできる節税方法が複数存在します。
最終的(?)には、就業規則の整備が必要になりますが、かなりの範囲で生活費を経費計上したり、無税で個人にお金を移す方法などもあります。
もちろん、規模等によりますが、不動産収入は億単位でも個人の所得はかなり低い資産家はいます。中には、わざと住民税非課税世帯にしている方もいるくらいです(オススメするものではありません)。
法人の赤字を10年間繰り延べできる
個人の場合は3年ですが法人は10年と長期に渡って赤字を繰り延べできます。複雑になりがちですが、シミュレーションをして計画的に繰り延べを繰り返している資産家はいます。
相続税対策になる
1人の個人が資産(大部分は不動産でしょう)を集中して所有していると、相続税が高額になります。
ですので、早いうちに不動産という資産を個人から法人に移し、不動産が生み出す不動産収入を家族(子どもたち)に分散させます。このときの現金が将来の納税資金にもなります。
なお、法人の株主になると、乱暴な説明で恐縮ですが「法人が所有する不動産の価値=株式の価値」となりますので、誰がどれだけ所有するのか十分に検討が必要です。例えば、もともとの個人が所有していた不動産を、その個人が100%株主になったところで、それだけで相続税が安くなることはありません。
ちなみに、相続対策(特に分散対策=ケンカしないで遺産を分けられるようにすること)が目的でしたら、合同会社ではなく株式会社にすることで所有と経営を分けられるようにしておきます。
その他
日本の税制は、基本的に「個人は増税」「法人は減税」の方向性にあります。
法人化のデメリットとは?
メリットがあるのなら、当然ながらデメリットもあります。
赤字でも法人住民税を払うことになる
東京都の場合は7万円です。赤字でも売上がゼロでも納税する金額となります。
税理士報酬等が必要になる
税理士に依頼しなくても自分で記帳・申告するなど手間が発生します。
社会保険の加入が必要になる
とは言え、サラリーマンをされているようなら、そちらの主たる会社で控除されるだけになります。本題から逸れますので詳細な説明はしませんが、法人化にあたり税理士だけではなく社会保険労務士に相談もしましょう。
不動産売買の経費が発生する
- 売買契約書の印紙
- 所有権移転登記の登録免許税
- 不動産取得税
- 金銭消費貸借契約書の印紙(必要な場合)
- 法人設立費用
- 法人登記場所の維持費(事務所の賃料など)
コンサルタントなんて要らない法人化のポイント
繰り返しになりますが、法人化は難しくはありません。例えば次のような感じです。
法人設立の費用
司法書士に相談して設立できます。超概算ですが諸経費込みで資本金も別で、合同会社なら20万円くらい、株式会社なら40万円くらいです。
印鑑はネット通販で注文すれば翌日に届きます。風水だとかそういったことを気にしないのであれば、安いもので構いません。嗜好の世界です。
法人の種類は株式会社にする? 合同会社にする?
所得税の節税が目的で、相続対策はぜんぜん先…ということであれば合同会社で良いでしょう。相続対策を視野に入れるなら株式会社にします。法人の所有と経営を分けられる柔軟性が相続対策に活かせます。
法人の定款の注意点
定款には不動産賃貸業以外の事業は入れないほうが銀行の受け(?)がいいです。
法人設立までの時間
設立は、司法書士に依頼すれば即日、登記申請して1週間もあれば登記簿が取得できます。
法人名(会社名)はどうする?
一番難しいのは、法人名を決めることでしょう(笑)。
良くあるパターンは、私(大友)を例にすると
- 大友不動産管理
- 大友不動産管理サービス
- 大友住宅管理
- 大友住宅管理サービス
- 大友エステート
- 大友財産管理
- 大友ハウス
- 大友ライフ
- 大友アセット・マネジメント
- 大友プロパティ・マネジメント
あたりでしょうか(笑?)。
こちらも趣味嗜好の世界なので何でもいいのですけれど、わかりやすい名称のほうが、あらゆる面で便利です。
ちなみに、株式会社や合同会社は個人的には社名の後ろかな〜と思います。
こちらの記事も参考に。
法人の決算期は何月にすべき?
決算期は何月でもいいのですが、あえて候補を出すなら、3月か9月でしょうか。
3月決算は他の多くの企業と同じなので、何かと都合が良いことがあります。ただ、今回の場合、不動産所有会社なので、そこまでメリットはないのかな、とも言えます。
ちなみに、税理士などは当初から決算期は分かっていますし、個人の確定申告のピークに合わせて、臨時スタッフを増員するようなことは想定内なので、特別に費用が割増になるようなことはありません。
敢えてデメリットを挙げるならば、やはり税理士先生が忙しい時期なので、早め早めにその期の記帳は済ませて税金対策の相談をしないと、定型業務以外の業務はできないと断られる恐れはありませす。
そうしますと、次に候補になるのが9月です。中間決算の時期ですが、私たちが依頼するような税理士の顧問先で中間決済をするような会社は稀だと思います。ですので、閑散期ということで税理士先生もリラックスしていて(?)、じっくり節税のことを相談できて、結果的にクリエイティブな節税提案が出てくる…と期待しすぎてはいけませんが、そういうことです。(?)
法人の登記住所どうする?
都市銀行・地方銀行・信用金庫等は口座開設申込後に現地調査に来ます。このとき実態がない(バーチャルオフィスなどの住所貸し)と判断されると口座すら開設させてくれません(ネット銀行は大丈夫)。
候補は次の通りです。
- 自宅(賃貸)大家さんや管理会社に相談してみましょう。賃貸借契約書上は認められないことがほとんどです。とは言え、緩い(?)管理会社や大家さんなら「そういうことなら…」と認めてくれたり黙認してくれたりすることもあります。
- 自宅(持家)マンションの場合は、管理規約を確認したり管理会社(管理組合)に相談してみましょう。戸建なら大丈夫です。
- 実家(持家)こちらもマンションの場合は、管理規約を確認したり管理会社(管理組合)に相談してみましょう。戸建なら大丈夫です。
- 実家(賃貸)こちらも自分が賃貸住宅と同じです。
- 所有物件の一室 これが現実的なところでそう。例えば、1階の奥の日当たりが悪いなどの理由で入居しづらい部屋を選びます。
- レンタルオフィス 24時間365日使えたり完全に物理的にも個室になっていて(パーティションなどのような区切り方ではなく天井まで壁がある)その法人用の郵便受けがあるようなら大丈夫です。
- バーチャルオフィス 恐らく、ほとんどNGになると思われます。ただし、そのバーチャルオフィスの運営会社と、そのメインバンクとの間で協定のようなものを結んでいて口座開設が出来るケースがあります。運営会社に確認しましょう。
法人設立したことが勤務先にばれないか?
基本的に、大丈夫です。
法人から個人に役員報酬を支払うことにすると、2か所以上から給与をもらっていることになるので、確定申告が必要です。このとき、住民税の納付方法を普通徴収を選択します。そうすることで、勤務先からの給与は引き続き源泉徴収されて、法人からの報酬分は自治体に別途、納税します。ただし、すべての自治体が普通徴収に対応していないそうなので確認しましょう。
社会保険の扱いも注意が必要です。基本的に設立した法人で社会保険の手続はしません。年金事務所から勤務先にバレます。
また、法人番号の検索サイトで、あなたの自宅に法人があるとバレます。これは非公開に出来ます。いまのところ勝手に公開はされませんが、今後の動向に注意してください。
あとは、人に話さないことです。
どこでどう漏れるかわかりません。SNSなども同じです。多くの人は、うまくいくと、ついつい他人に言いたくなるものなのです。自分は大丈夫と思わず、吐き出せる環境を作りましょう。具体的には、SNSで別アカウントを作ります。名前もアイコンも別にします。写真もあまり載せないようにします。SNSから個人を特定するという副業(?)があって費用は5,000円程度だそうです。ヒントを与えないようにします。こうして、吐き出す環境やルールを作り気持ちを落ち着かせると良いでしょう。
名義変更(売買契約)
個人から法人に不動産の所有権を変える=名義変更…のイメージは誤りです。確かに、法人の代表があなたでしたら、個人も法人もどちらも「私」じゃないか! と思いますよね。しかし、法律上は、別人格となります。ですので、両者で売買契約が必要となります。
とは言っても、不動産会社(宅地建物取引業者)による重要事項説明書もページ数の多い売買契約書も必要ありません。なぜなら、売主も買主も、どちらもあなた(や家族)なのですから重要事項説明といっても「不動産会社より私たちのほうが良く知っている!」ものですよね。
そもそも重要事項説明は、不動産のことをよく知らない買主を守るためのものです。今回は、よく知っているのですから必要ありません。売買契約書もA4一枚〜二枚程度の簡潔なもので十分です。契約書も、本来はトラブル予防のためのものだからです。
実務上、税理士が適当に作ってくれます(雛形があります)。費用は手間代くらいですから数万円です。
法人が物件を購入する資金調達
法人が個人から購入する不動産の購入資金はどうしたらいいのでしょうか?
もちろん銀行から融資を受けてもいいのですが、それはそれで経費が掛かります。もっとも、ある意味、逆に銀行に貸しを作って別のなにかのときに使えるカードにするのは良いでしょう。ですが、必要なときになって「それは前任者の担当や支店長の話で私は知らない」などと言われることは想定しておきたいものです。
別の方法としては2つあります。まずは、個人が法人に貸します。実務的には、金銭消費貸借契約を締結します。これも税理士が用意してくれるでしょう。もう1つは、売買契約のときに割賦払い(分割払い)とします。割賦払いは、未だに重要事項説明書の雛形に項目が残っているくらい、昔は普通の契約だったのです。
法人化の全体のコーディネート(コンサルティング)
そこそこの税理士なら全体の段取りが出来ますから不要です。
不慣れな税理士だったら、それくらい「息を吸って吐く」くらい日常的にこなしているような税理士に依頼しましょう。スポット(その業務だけ)でもいいでしょうし、全面的に顧問税理士を変えてもいいでしょう。
もちろん、法人化の部分だけでしたら私もお手伝いできます(税理士ではないので税務申告の代理はできませんがアドバイスはできます)。
法人・個人の税務申告
それこそ税理士に頼りましょう。
どれくらいの節税効果が得られるのか、試算してもらいましょう。ただ、試算はあくまで試算であって保証されるものではありません。この点を嫌がる(後でクレームになるから)税理士は私はかなり多くいるように感じます。そもそも、所得税や法人税の申告業務だけで手一杯で他の業務はできればやりたくないとの税理士も多くいるように感じます。
税理士がカバーしきれていない?
私としましては、法人化による所得税の節税なんて、顧問税理士がいるくらいならみんな適切にやっているんだろうな、くらいの感覚でいました。
上記のような実務知識は、不動産実務検定2級テキストにも記載されているレベルの話です。
ところが、昨今、税務実務が複雑化しているのか、税理士の高齢化が進んでいるのか、このあたりの分野を税理士がカバーしきれずにいるのでしょうか。(税理士先生、がんばって!)
だからなのか、例えば、ご両親がバブル期に取得したような不動産を相続した50代〜60代〜の方で、マネーリテラシーの勉強がこれからだ・・・という方が、銀行からの過剰な提案(今回の事例に限らず)を鵜呑みにして、ちょっと何かモヤモヤするんですけど、って相談が増えてきました。
税務知識・不動産実務知識の有無は関係ない!?
マネーリテラシーだとか税務知識だとか不動産実務知識だとか、そういうものは必要なものです。しかし、そもそも「ポジショントーク」を考えることができれば「何かおかしいぞ」と気付くんじゃないかな〜と思うのです。
今回のことでしたら、銀行のポジショントークは主に「融資したい」ことにつながります。それも不動産を担保に取れるわけですから最高級の融資です。出世につながること間違いありません!(?)
ですので、融資金額(法人の購入資金)を水増しするために、不動産仲介会社を入れて、コンサルタントも入れて、税理士も入れて、いずれも割高な費用で提案書が作られます。
あ〜ちょっと違いますかね。
もう少し掘り下げると、恐らく、法人化することで節税できる金額の10倍(「10年したら元が取れますよ」という営業トーク)から逆算した費用にすることでしょう。
私だったらそうします。10年以降はずっと得ですよ〜と。
私が思いつくくらいです。もっと頭のいい人たちは、もっと顧客の利益になるようなラッピングにして見栄えの良い提案書を作成することでしょうね。
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