ワークライフバランス

寄稿記事

賃貸管理業界とワークライフバランス

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宅建士/AFP/PMP®など。不動産オーナー向け教育事業、東京大家塾(2006年〜)や不動産実務検定®認定団体J-REC理事・東京第1支部長・認定講師(2008年〜)として累計3万件以上の不動産投資・活用・トラブル相談の経験から失敗しない不動産活用を体系化。Google★4.8/215件〜・Udemy講師★4.2/972名〜・ココナラ個別相談★4.9/123件〜。著書/共著17冊・講演実績全国25団体〜・寄稿/取材協力多数。

最新記事 by J-REC公認不動産コンサルタント 大友哲哉 (全て見る)

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和。賃貸管理業は、一般的に、土日出勤だったり時間を問わない入居者からの対応に追われたりなど、不定期・長時間労働になりがちです。経営者として、社員とその家族の幸せ、そして入居者・オーナーの満足度を両立させるための取り組みと考え方を紹介します。

起業したにも関わらず、自分の家族との時間を犠牲にしてまで、お客様や従業員の都合を優先していませんか?

私の会社は、私の都合が最優先。それでも、売上や従業員の満足度は向上。さらに東京都や板橋区からも表彰されました。

ワークライフバランスを進めるにあたり、あらゆる取り組みで意識していることは「選ぶことで選ばれる」ことです。働き方を選ぶために、お客様を選び、スタッフを選び、仕事を選ぶことです。その結果、お客様から選ばれ、スタッフに選ばれるのです。

まずは、ワークライフバランスを実現するにあたり、どのような取り組みをしているのかを紹介しましょう。

営業時間を短くする

現在の営業時間は、平日の午前10時から午後4時。土日祝日を定休日にしています。営業時間外に電話に出ることは禁止。休日出勤もありません。

なぜ、このような営業時間にしたのでしょうか。それは、私含めスタッフは皆、子育て中だからなのです。私は早く家に帰って、子どもたちといっしょに晩ごはんを食べたいのです。そして、ほかのスタッフは主婦ばかり。彼女たちは、子どものお迎えや晩御飯の支度があります。そうすると午後4時に終業するのがベストの時間です。

電話に出ない

当社の代表電話に電話をかけても、留守番電話のことが多いことでしょう。なぜなら、電話をかけてくる人はお客様ではない、と考えているからなのです。そうはいっても、電話対応の必要な業務はあります。そこで、業務ごとに電話番号を分けて、コールセンターに外注しています。

まず、管理物件の入居者からの問い合わせ対応は、24時間365日対応のコールセンターに。仲介会社からの物件確認は午前9時から午後9時まで(年末年始のみ休業)のコールセンターに依頼しています。しかも、それぞれ、問い合わせ内容のレポートが届きますので、オーナーへの報告に便利です。

ちなみに、原則として、オーナーと電話で話をすることもほとんどありません。当社の考え方に理解していただけるオーナーとだけ仕事をするようにしています。

在宅ワーク化を進める

在宅ワークは究極のワークライフバランスを実現する方法です。自宅で仕事ができるので、子どもを保育園などに預けられなくても働けます。子どもが病気で学校を休むときでも働けます。

いつから住居と職場がこれほど離れることになったのでしょうか。おそらく高度成長時代からでしょう。それまでは職住近接・職住一体が主流です。在宅ワークとは、昔の働き方に戻すだけとも考えられます。今は、ITサービスの多様化と低価格化で、小さな会社でも実現できる働き方になりました。続いて具体的なIT活用の取り組みを紹介します。

電話は個人のスマホと兼用する

スタッフ個人のスマホにIP電話アプリを導入しました。仕事用に050の番号が使えます。電話料金は会社に請求がきます。

ファックスはメールと一体化する

ファックスは、メールを使って送受信できるサービスを導入しました。メールさえ使えればどこでもファックスの送受信が行えます。

グーグルのサービスを活用する

メールやスケジュール管理、ファイル共有はいずれもグーグルのサービスです。類似サービスも多くありますが、検索機能を重視して選びました。

ペーパーレス化を意識する

契約書類などはスキャンして電子データ化します。書籍も同様です。保管スペースの削減だけでなく、検索できるので探すのもカンタンになりました。

チャットワークを活用する

日常のスタッフ同士の事務連絡は、チャットワークというアプリを使っています。LINEのようなメッセージアプリですが、ビジネス利用に向いています。というのも、タスク機能を使うことで、誰に・何を・いつまでに・作業してほしいのかを管理できるのです。

日本人の労働時間は世界一長い

ここで改めてワークライフバランスの本質を説明します。一般的には、労働問題対策や福利厚生と思われがちです。しかし、その本質とは、生産性を向上させる取り組みなのです。

OECD加盟国の労働生産性2013年34カ国比較によると、日本の労働時間は世界一長いのに、生産性は22位なのです。調査方法や計算には若干違和感はあるものの、ただ単に長く働けば、それだけ富を生み出せる時代ではないことに異論はありません。

では、短い時間で生産性を高めるにはどうしたらいいのでしょうか? それは、私生活を豊かにすることです。

会社でシゴトばかりしていては視野が狭くなりがちです。そこで仕事から離れることを意識します。家族と出かける、昔の友人に会う、行ったことのない場所に出かけてみる、画期的な新サービスを利用してみる、いろいろあります。こうした時間や体験の中から、世の中の変化を感じたり、仕事に活かせる新しい気づきを得たりすることで、新しい価値を創造できるようになるのです。

当社の取り組みの課題

しかしながら、ワークライフバランスは万能ではありません。今の懸念事項はスタッフのモラルの低下です。働いている様子が見えないので、怠けていてもわからないのです。

そこで、毎朝のオンライン・ミーティングの中で「グッドアンドニュー」というエクササイズを行っています。24時間以内の出来事で良かったこと、または新しい出来事をみんなでシェアします。業務以外のことを話し合うことで、お互いの結びつきを強めて、助け合い・お互い様の精神を高めています。

いかがでしょうか。本音を言うと、当社の取り組みは弱者の戦略です。優秀な人材を高給で雇うことができないことの裏返しなのです。そして「選ぶことで選ばれる」の考え方も「選べるほど選択肢はない」ことの裏返しともいえます。それでも、私のワークライフバランスというワガママを貫き通すことはできています。御社も少しずつ取り組んでみましょう。

最初におすすめしたいのは物件確認の電話を外注することです。単純労働からスタッフを解放してあげて、生産性の変化を実感してみましょう。

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