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空室対策には予算が必要です。築古物件ほど、その予算は必要です。しかし、空室の多い物件の大家さんは、その空室対策の予算を捻出するのが困難です。そこで活用したいのが、補助金です。2019年度も4月中旬に受付スタートする模様です。
補助金は住宅セーフティネット制度のうちの1つ
空室対策リフォームに補助金が使えるなら使ってみたいものです。この制度は「住宅セーフティネット制度」のうちの1つです。残りの2つは、入居募集に使えるポータルサイト「セーフティネット住宅情報システム」に登録できること、さらに、入居を受け入れるにあたり不安なことや困ったことについて、専用の相談窓口を利用できることです。
なぜ補助制度があるのか
賃貸住宅を借りづらい方たちと、民間の空き家・空き室をマッチングさせるためです。
古いタイプの大家さんの中には、貸したくないタイプの入居者さんがいます。例えば、フリーター、高齢者、子育て世帯、シングルマザー、障害者、外国人などです。こうした方たち一定数以上いますし、また今後も増加する見込みです。彼らは、必要十分な住環境で暮らせていないのが現実です。これは一種の社会問題です。
従来、こうした方たちは公営住宅に住むことが多かったものです。しかし、その公営住宅も満室だったり、交通の便が悪かったりしますし、また運営母体の地方公共団体の財政難から、新たに建築したり、老朽化のための改修工事を行うコストが負い切れない事情もあるでしょう。一方で、民間には空き家・空き室が増加しています。こちらは別の社会問題となっています。
そこで、この両者をマッチングしたいものです。とはいえ、彼らは借りられるなら、老朽化したままの建物や設備でもいいかというと、そうもいきません。やはり、ある程度の住宅性能は必要です。また、家賃を減額したり、入居一時金を下げることが必要かもしれません。こうした費用負担を民間の大家さんに負担させるのは酷というものです。
こうして「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(通称「住宅セーフティネット法」)が2017年4月26日改正され、同年10月より新たな制度として国土交通省が主導して補助制度などがスタートしました。
大家さんのメリット
大家さんにとって、この制度を活用するメリットは3つあります。
メリット1.補助金など経済的な支援を受けられる!!
まず、最大のメリットは、リフォームに補助金が出ることです。その金額は、戸あたり最大100万円。補助率が2/3なので、150万円以上のリフォームをすると、100万円の補助金を受け取れます。ちなみに、補助金は融資と異なり、返済義務はありません。
なお、補助金は、リフォーム代金を支払った後に交付されますので、ある程度の自己資金が必要です。なお、住宅金融支援機構から、工事費の8割まで融資を受けることは可能です。
また、家賃を相場より減額した場合は、最大で月2万円の家賃補助があります。さらに、家賃債務保証料についても、戸あたり3万円まで補助があります。
それぞれ詳細は後述します。
メリット2.専用ポータルサイトで入居募集ができる!!
次のメリットは、入居募集するにあたり、専用ポータルサイトに掲載できることです。
セーフティネット住宅情報提供システム
https://www.safetynet-jutaku.jp/guest/index.php
なお、登録基準については、後述します。
メリット3.入居に関する相談などができる!!
3つ目のメリットは、さまざまなサポートを受けられることです。
3-1.住宅相談など入居に係る相談
入居受け入れにあたり、不安なこと、困ったことがあれば、地域の居住支援法人等に相談できます。
3-2.入居者への家賃債務保証サービス
入居者に連帯保証人になれるような身内がいないと、家賃債務保証サービスの審査が通らないことがあります。そこで、そうした点を理由に審査を断らない家賃債務保証サービスを利用できます。
3-3.生活保護者の家賃の直接受領
地方公共団体によっては、生活保護者に生活保護費を全額支給したのち、生活保護者自ら家賃を支払う形式をとっていることがあります。ですが、生活保護者によっては、本来家賃として支払う金銭を別のことに使ってしまい、家賃を滞納することがあります。そこで、地方公共団体から大家さんに直接支払うようにすることができます。
大家さんのデメリット
返済義務のない補助金などは魅力的ですが、一方でデメリットもあります。
デメリット1.最低10年間は住宅確保要配慮者*専用住宅となる
これが最大のデメリットと言えます。つまり、一般的な入居者に賃貸できなくなります。とは言え、その住戸は補助金を使ってリフォームした住戸単位となるので、1棟すべてではありません。
住宅確保要配慮者とは以下の通り
- 低額所得者(月収158,000円以下)
- 被災者(発災後三年以内)
- 高齢者
- 障害者(身体・知的・精神)
- 子育て世帯(高校生までの子供を養育する世帯)
- 外国人
- 東日本大震災等の大規模災害の被災者(発災後三年以上経過)
- 地方公共団体が地域の実情に応じて定める者
デメリット2.10年以内の売却が制限される
売却できないわけではありませんが、住宅確保要配慮者専用住宅として残りの期間を継続運営する旨の誓約書が必要となり、国土交通大臣の承認を受ける必要があります。そのため、例えば大臣の承認を受けられなかった場合は、売買契約を白紙撤回できる特約などを盛り込む必要があるでしょう。
デメリット3.手続きが極めて煩雑
補助金の財源は税金なので厳格なルールがあり事務手続きが極めて煩雑です。各種マニュアルなどはありますが、こうしたマニュアルを読み込んで事務手続きを行うのが不慣れな方は、相当苦労することでしょう。もちろん、事務手続きを行うための人件費は補助金の対象外ですし、行政書士等に依頼する費用も対象外です。このデメリットも大きなものです。