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はじめに:あなたの不動産活用の目的は何ですか?
先日9月21日の日曜日に、東京大家塾の「ステップアップ・ケーススタディー講座」として、完成直前の新築アパート見学会を東尾久にて開催しました。
今回は、大手ハウスメーカーが手掛けた鉄骨造5階建ての物件です。
このような見学会に参加するとき、あなたは何に注目しますか。
立地、間取り、利回り…もちろんそれらも重要です。しかし、最も大切なのは「この物件が、誰の、どんな目的のために建てられたのか」を理解することなのです。
今回は、その「目的」という視点から、アパート経営の本質に迫っていきましょう。
まるで分譲マンション。参加者から驚きの声が上がった室内
早速、建物の中へ。
共用部分から2階のお部屋へと、参加者の皆さんと一緒に見学を進めます。
「私が持っている物件より、ずっとグレードが高いですね」
「自分が住んでいる分譲マンションと遜色ないように感じます」
参加された方々からは、次々と感嘆の声が上がりました。
私自身は仕事柄、何棟もこうした物件を見ていますが、改めてその品質の高さに気づかされます。では、プロの視点から見て、具体的にどこが違うのでしょうか。
細部に宿る「長期安定経営」の秘訣。私が「巾木」に注目する理由
私が特に注目したのは「巾木(はばき)」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。巾木とは、壁と床の境目に取り付けられている部材のことです。壁の裾を汚れや衝撃から守る役割があります。
一般的な賃貸住宅では、「ソフト巾木」というビニール製のものが多く使われます。コストが安いからです。
しかし、この物件で使われていたのは「樹脂巾木」。見た目に高級感があるだけでなく、非常に丈夫で傷がつきにくいのが特徴です。
- ソフト巾木: ビニール製で安価。一般的な賃貸住宅で多用される。
- 樹脂巾木: 硬い樹脂製で高価。傷に強く、見た目が良い。
巾木はほんの一例に過ぎません。
こうした細かい点にまでこだわることで、高所得層の入居者さんに「ここに住みたい」と選ばれ、そして「長く住み続けたい」と思っていただける物件になるのです。
目的を明確にすれば、選ぶべき物件が見えてくる
ここで、冒頭の問いに戻りましょう。
あなたのアパート経営の目的は何でしょうか。
- 相続税対策をしたいのか?
- 家賃収入で日々の生活費を賄いたいのか?
この目的によって、選ぶべき物件も経営スタイルも全く変わってきます。
今回のハウスメーカーの物件は、明らかに前者の「相続税対策」が主目的です。いつ訪れるか分からない相続の際に、アパート経営が傾いていては本末転倒です。だからこそ、高級仕様で長期的に安定した経営が求められるのです。
逆に、家賃収入で生活をしたいのであれば、キャッシュフローが最大化するような企画を考えるべきでしょう。そのためには、ある程度の手間暇がかかることも覚悟しなければなりません。
この物件は、東京23区の東側という都市型水害が懸念されるエリアにありますが、このハウスメーカーは災害への堅牢性にも定評があります。こうした安全性も、長期的な安定経営という目的を支える重要な要素なのです。
デメリットも、目的次第ではメリットになる
見学会の後は、希望者でランチ懇親会へ。
ここでも、活発な意見交換が行われました。
「ハウスメーカーの物件は、建築費が高いから利回りが低いのでは?」
「サブリースだと、オーナーの意見が反映されにくいと聞きますが…」
確かに、これらはハウスメーカーによるアパート経営のデメリットとしてよく挙げられる点です。
しかし、今回の目的は「相続税対策」でした。相続税対策で最も重要なのは、手間をかけずに安定した経営を続けることです。空室が出て、その対策に時間や頭を悩ませるような事態は避けたいわけです。
そう考えると、
- 高品質な建物(結果として低利回り)
- 手間のかからないサブリース運営
これらは、目的達成のためにはむしろ合理的な選択と言えるのではないでしょうか。
コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを考えたとき、何が最適解かはあなたの目的によって変わるのです。