新手の詐欺に備えよ

事例紹介

非公開の優良物件でもM&A案件なら素人は手を出さない

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宅建士/AFP/PMP®など。不動産オーナー向け教育事業、東京大家塾(2006年〜)や不動産実務検定®認定団体J-REC理事・東京第1支部長・認定講師(2008年〜)として累計3万件以上の不動産投資・活用・トラブル相談の経験から失敗しない不動産活用を体系化。Google★4.8/226件〜・Udemy講師★4.18/1,107名〜・ココナラ不動産相談★5.0/136件〜。著書/共著19冊・講演実績全国30団体〜・寄稿/取材協力多数。

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不動産M&A 高収益物件の裏に潜む影

不動産投資の世界は、常に魅力的な物件との出会いを求める旅のようなものです。近年、不動産価格の高騰が続く中、高収益が見込める物件情報は、まさにオアシスのように輝いて見えるかもしれません。しかし、その輝きの裏には、砂漠の蜃気楼のように、危険な罠が潜んでいる可能性があります。

不動産価格高騰 甘い話にはご用心

まとまった資金をお持ちの方にとって、不動産投資は依然として人気の高い資産運用方法です。しかし、都心部を中心に不動産価格が高騰し、優良物件の取得はますます困難になっています。

そんな状況下で、「好条件の物件情報」や「特別なルートで入手した情報」を持ちかけられたら、つい心が揺らいでしまうかもしれません。しかし、冷静に考えてみてください。本当にそんなうまい話があるのでしょうか?

不動産投資の世界には、「儲け話」の裏に巧妙な罠を仕掛ける詐欺師たちが存在します。彼らは、巧みな話術と偽造書類を駆使し、経験豊富な不動産オーナーでさえも騙してしまうことがあります。これから注意したいのが、不動産M&Aに絡んだ詐欺です。

不動産オーナーの盲点…なぜM&Aで騙されるのか

M&Aとは、企業の合併・買収を意味しますが、近年では不動産取引にも活用されることがあります。不動産M&Aは、通常の不動産売買とは異なり、企業の株式や事業を譲り受けることで、間接的に不動産を取得する手法です。

この手法は、税制上の優遇措置を受けられるなど、メリットも多い一方で、複雑な手続きを伴うため、専門的な知識が必要となります。そのため、M&Aの仕組みをよく理解しないまま取引を進めてしまうと、詐欺師の格好の標的になってしまう可能性があります。

さらに、数億円規模の資産を持つ不動産オーナーであっても、事業者としての意識が希薄で、専門家や大手企業を盲目的に信用してしまう傾向が見受けられます。詐欺師たちは、こうしたオーナーの心理的な隙を突いて近づいてきます。

彼らは、「自分は専門家だから大丈夫」「大手企業が相手だから安心」といった思い込みを巧みに利用し、オーナーを騙そうとします。高収益物件の情報に目がくらみ、冷静な判断力を失ってしまうと、詐欺師の巧妙な罠にハマってしまう危険性があります。

続いて、不動産M&Aに潜む具体的なリスク、特に地面師と呼ばれる詐欺師グループの手口について詳しく解説していきます。

不動産M&Aの仕組みとリスク

不動産M&Aとは、企業の合併・買収を通じて不動産を取得する手法です。通常の不動産売買では、土地や建物を直接購入しますが、不動産M&Aでは、その不動産を所有する会社ごと買収してしまうイメージです。

所有権移転のM&Aの舞台裏で何が起きるのか

例えば、A社がオフィスビルを所有しているとします。B社がそのビルを取得したい場合、通常の売買ではA社からビルを直接購入します。一方、不動産M&Aでは、B社がA社の株式を取得し、子会社化することで間接的にビルを所有することになります。

つまり、不動産M&Aでは、不動産そのものではなく、不動産を所有する会社の株式が取引対象となります。

このとき、特に不動産取引にかかる税制と、株式取引にかかる税制との違いから、後者を選んで取引することがあります。

メリットとリスク 賢いオーナーの選択

不動産M&Aには、一般的に以下のようなメリットがあります。

  • 税制上の優遇: 場合によっては、通常の不動産売買よりも税負担を軽減できる可能性があります。
  • 事業承継: 後継者不足に悩む企業が、事業ごと不動産を譲渡する手段として有効です。
  • 非公開物件の取得: 市場に出回っていない物件を取得できる場合があります。

しかし、メリットばかりではありません。不動産M&Aには、以下のようなリスクも潜んでいます。

  • 複雑な手続き: 企業の財務状況や法務上の手続きなど、専門的な知識が必要となります。
  • 高額な費用: 弁護士や会計士などの専門家費用や、デューデリジェンス(資産調査)費用などがかかります。
  • 隠れた負債: 買収後に、対象会社の予期せぬ負債が発覚する可能性があります。
  • 地面師のリスク: 後述しますが、地面師と呼ばれる不動産詐欺グループに騙されるリスクがあります。

不動産M&Aは、税制上有利だという顔をしていますが、物件調査や重要事項説明書とは別に起業の資産と債務を含めた調査に(一般に「デューデリジェンス」略して「デューデリ」)費用が掛かり、不動産仲介手数料の3%より割高になることもあります。

一方で、あくまで株式取引のため、宅地建物取引業の対象から外れるため、不動産取引の安全性の担保が取れません。

また、通常の不動産売買に比べて、売買対象となる範囲が広がるため複雑な手続きを伴います。そのため、メリットとリスクをしっかりと理解した上で、慎重に判断することが重要です。

巧妙化する詐欺の手口はプロ経営者も見抜けない

現時点では、不動産M&Aによる詐欺事件は、ほとんど聞きません。あったとしても、数十億円・数脚億円規模ですから、数億円程度の不動産オーナーは規模が小さく狙われないのかもしれません。

しかし、単なる不動産取引ではなく、不動産M&Aの場合は物件価格以上の損失を被ることがありますので、規模の大小だけで判断するのは早計です。

ここでは今後の不動産M&A詐欺を予見できるように、2つの事例から学びましょう。

事例1. LIXILのM&A失敗で660億円の損失

2014年、LIXILはグローバル展開を加速させるため、ドイツの水栓金具メーカー「グローエ」を約4000億円で買収しました。しかし、買収後のデューデリジェンスでグローエの中国子会社における不正会計が発覚。

LIXILは、グローエの企業価値を過大評価していたこと、そして買収後の統合プロセスもスムーズに進まなかったことから、約660億円もの減損損失を計上することになりました。

事例2 架空の顧客リストや売上高による健康食品販売会社のM&A詐欺事件

2020年に発覚した事件では、健康食品販売会社A社が、架空の顧客リストや売上高を偽装し、B社にM&Aを持ちかけました。B社は、A社の提示した虚偽の情報に騙され、高額な買収費用を支払ってA社を買収しました。しかし、買収後にA社の粉飾決算が発覚し、B社は巨額の損失を被りました。

この事例では、A社は、

  • 架空の顧客リストを作成: 存在しない顧客を多数リストに記載し、顧客基盤が大きいように見せかけた。
  • 売上高を水増し: 実際の売上高よりもはるかに高い数値を計上し、収益性が高いように偽装した。
  • 虚偽の事業計画を提示: 将来的な事業拡大の見通しを過大に評価し、B社に魅力的な投資先と思わせた。

などの手口を用いて、B社を騙していました。

これらの事例からわかるように、M&Aには、地面師による詐欺だけでなく、企業価値の評価ミスや統合の失敗など、様々なリスクが潜んでいます。M&Aを行う際には、相手企業の情報を徹底的に調査し、専門家のサポートを受けるなど、慎重に進めることが重要です。

4. 地面師のようは不動産詐欺から資産を守る オーナー必見の防衛策

M&Aには、地面師による詐欺や企業価値の評価ミスなど、様々なリスクが潜んでいます。これらのリスクから身を守るためには、どのような対策を講じるべきでしょうか?

デューデリジェンスの重要性 相手企業の真の姿を見抜く

M&Aを行う際には、デューデリジェンス(Due Diligence)と呼ばれる調査が不可欠です。デューデリジェンスとは、買収対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査し、リスクを洗い出すプロセスです。

具体的には、

  • 財務デューデリジェンス: 過去の財務諸表を分析し、収益性、安全性、成長性などを評価します。粉飾決算や不正会計の有無もチェックします。
  • 法務デューデリジェンス: 契約書、許認可、訴訟リスクなどを調査し、法的な問題がないかを確認します。
  • 事業デューデリジェンス: 事業内容、市場環境、競合状況などを分析し、将来の収益性を評価します。

デューデリジェンスを徹底的に行うことで、相手企業の真の姿を把握し、隠れたリスクを早期に発見することができます。

専門家との付き合い方 弁護士・税理士を正しく活用する

M&Aは、専門性の高い複雑な取引です。そのため、弁護士、税理士、会計士などの専門家のサポートを受けることが重要となります。

専門家は、

  • 契約書の作成・チェック: M&A契約書は複雑で専門的な内容を含むため、専門家のチェックが不可欠です。
  • デューデリジェンスの支援: 専門的な知識や経験を活かし、デューデリジェンスを効率的に進めることができます。
  • 税務・会計アドバイス: M&Aに伴う税金や会計処理について、適切なアドバイスを受けることができます。
  • 交渉の代理: 専門家が交渉を代理することで、有利な条件で契約を締結できる可能性があります。

ただし、専門家であれば誰でも良いというわけではありません。M&Aに精通した経験豊富な専門家を選ぶことが重要です。それも、売主側から紹介を受けるのではなく、第三者となる専門家です。

例えば、通常の不動産取引でも、司法書士を売主指定されることがあります。滅多には聞きませんが、司法書士がニセモノで売主とグルだった場合、売買代金を支払ったにも関わらず、移転登記しないだとか、二重売買されるリスクがあります。

不動産M&Aの場合にも同じかそれ以上のリスクが潜んでいます。

危険信号を見逃さない取引中止の判断基準

M&Aを進める中で、「何かおかしい」と感じたら、すぐに取引を中止する勇気も必要です。

例えば、

  • 相手企業が情報開示に非協力的
  • デューデリジェンスで不明瞭な点が多い
  • 契約内容に不当な条項が含まれている
  • 外部の専門家を介入させたがらない
  • 交渉が強引に進められる

といった場合は、危険信号と捉えましょう。

無理に取引を進めてしまうと、大きな損失を被る可能性があります。少しでも不安を感じたら、専門家に相談し、取引を中止することも検討すべきです。

5. 安全な不動産投資 M&Aを成功させるために

不動産M&Aは、高収益物件を取得する有効な手段となりえますが、同時に様々なリスクも伴います。安全な不動産投資を実現し、M&Aを成功させるためには、どのような点に注意すべきでしょうか?

地面師の被害を防ぐ知識

M&Aにおけるリスク管理は、まさに「備えあれば憂いなし」です。起こりうるリスクを事前に想定し、適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることができます。

地面師の被害を防ぐためには、

  • デューデリジェンスの徹底: 相手企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査し、リスクを洗い出す。
  • 専門家の活用: 第三者またはあなたが昔から知る弁護士、税理士、不動産鑑定士などの専門家のサポートを受け、契約内容や手続きの妥当性を確認する。
  • 情報収集: 相手企業の評判や過去の取引実績などを調べる。登記簿謄本や公的機関のデータベースなどを活用し、情報収集を徹底する。
  • 取引相手の確認: 取引相手の身元や権限をしっかりと確認する。面会時には、本人確認書類を提示させ、不審な点があれば取引を中止する。

これらの対策を講じることで、地面師のリスクを大幅に減らすことができます。

まとめ

不動産M&Aのすべてがダメなのではありません。不動産M&Aは、適切に活用すれば、不動産オーナーの未来を切り拓く強力なツールとなります。リスクとメリットを理解し、戦略的にM&Aに取り組むことで、資産を守り、さらなる成長を目指しましょう。

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