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ファンが集まる物件づくり

2015年!!「賃貸市場のゆくえ」と「幸福なアパートのかたち」を考える

大きく変わりつつある賃貸市場。今後、どのような物件が入居者の支持を得られるのか? どうすれば入居者もオーナーも楽しい、未来を明るくする物件がつくれるのか?

賃貸オーナーが直面する現実

相続税の大増税に始まった2015年ですが、新年に際して、これからの時代を明るく楽しくする「幸福のアパートづくり」について考えてみませんか?

その前に、現在の賃貸市場がどういう状況にあるのか、厳しい現実をざっと整理しておきましょう。

増税は今後も続く

すでに相続税は大増税されていますが、今後も増税が続くと考えましょう。なぜなら、庶民の税金・消費税の増税は、富裕層の税金・相続税の増税とセットになるからです。同じ理由で、固定資産税・都市計画税の増税(特例措置の縮小や廃止)もあるでしょう。オーナーは、賢明な節税対策を行うことが重要になります。

人口減少とともに世帯構成も変化

実際に人口が減るのは2019年頃からといわれますが、すでに減少している地域もあります。今後は、高齢者の単身世帯、高齢の親と子の世帯、母子家庭、外国人などが増え、世帯の構成も変化します。

都市計画と賃貸需要の関係

近年の都市計画は「コンパクトシティ構想」を基に作成され、自治体は中心エリアに人口を集め、効率の良い街づくりを考えています。賛否両論はあっても、国土交通省が推進しているので無視できません。保有物件が中心エリアの外にあるなら、対策が必要です。なぜなら、時間とともに価値が減少するからです。内側にあればひとまず安心ですが、賃貸住宅の供給が増加し、競争は激しくなる一方でしょう。

賃貸物件はますます多様化

賃貸住宅の在り方が多様化しています。最近話題の入居者がリフォームして住む「カスタマイズ賃貸」、また、例えば「ガレージ付き賃貸」や「畑付き賃貸」など対象を絞った物件も増えています。人気のシェアハウスでは、経済性よりコミュニケーションを求める人が増え、さらに趣味やビジネスなど目的別の物件へと進化しています。

今後さらに、新しいタイプの賃貸住宅が出現し、築古物件はこれまで以上に価値づくりが必要になっていくでしょう。

真に大切にすべきことはモノよりヒト

厳しい状況の中で、満室経営を続けるにはどうすればよいのでしょうか?

答えは、一言でいうと「ファンが集まる物件づくり」だと思います。その場しのぎの空室対策ではなく、「そこに住みたいから住む」、そんなファンが生まれる物件づくりです。

従来の発想を転換する

従来のやり方では、入居者の心をつかむことは厳しいのですが、発想と努力次第でトビラは、いくつでも開けることができます。

そのためには、部屋を提供する側が真に大切にすべきことがあります。それは、建物や設備、デザインなどの「モノ」より「ヒト(入居者さん)」を中心に考えることです。

設備は、二の次でよい

建物の質が高く、最新の設備・仕様の物件は理想的です。しかし、大部分の入居者さんは、それに比例した家賃を支払うことはむずかしいでしょう。今後、入居者さんが求めるものは、さらなる住まいの性能ではなく、別のところにあると思います。それに気づくことが「ファンの集まる物件づくり」の第一歩だと思います。

設備も大切ですが、住まいとして必要最低限の性能を備えているなら、建物や設備に過剰に投資をする必要はなく、二の次でよいと私は考えています。

入居者さんの課題や希望を解決・実現する物件づくり

「入居者さんを中心に考える」とは、入居者さんに寄り添って物件づくりをするということです。

人に寄り添うことで課題が見えてくる

入居者さんは、人としてのさまざまな課題や希望を持っていますが、それは、寄り添うことではじめて見えてきます。

ここで言う「課題」とは、もっと収納があったらいいな、トイレとお風呂が別々だといいなというような、住まいに関係した
ことではありません。もっと広い意味で入居者さんが、現在かかえている課題や希望、解決したいと思っていることなどです。

もし、課題を解決し、希望を叶えてくれる物件があれば、どれだけ入居者さんに歓迎されることでしょう。

入居者さんと一緒に考えていく

これまで、賃貸住宅を提供する側は、設備・仕様の質を高めることに意識が向いていました。言うまでもなく、それで満室を維持するには限界があります。コストもかかります。一方、入居者さんは、これまで賃貸住宅に自分の課題の解決を求めることなど考えもしなかったでしょう。

今後、住宅の供給側は従来の常識から脱却し、積極的に課題解決・希望実現型の物件をつくる、あるいは入居者さんと一緒に考え、より住みやすい部屋をすることが、未来を開く大きなカギだと思います。

この部屋に住みたくてやってきた人たち

私のところで考案した事例を3つほどご紹介しましょう。

事例1)フリーター・派遣社員向け「資格報奨金付きマンション」

「難関資格に合格し、キャリアアップして収入を増やしたい。そんな課題や希望を持つ入居者が集まる物件」。23.09m²、1K、家賃3万5000円〜。単なる低所得者ではなく、向上心のある人をターゲットにしています。

主な特徴

  • 資格を取得すれば報奨金が受け取れる
  • 照明は、勉強の時と休む時で色や明るさが調節できるLED
  • 一階には洗濯時間が節約できる大型コインランドリー
  • すぐに生活できる冷蔵庫付き、など

このほかにも、奨学金制度を設けた学生向け物件もあります。

事例2)シングルマザー向け「子供をのびのび育てられるアパート」

「母子家庭のお母さんの悩みを軽減し、子育てを応援する物件」。和室2・洋室1の3K、37.26m²、家賃5万5000円〜。このケースはターゲットを絞っただけで、特に何かをしたわけではありません。地域の母子家庭の状況を調べると、2Kに住む家庭が多く存在。そこで、3Kの物件をお持ちのオーナーさんに、受け入れを提案したところ、快諾されました。3Kは人気がないからと、必ずしも1LDKに間取り変更しなくてもよいのです。

主な特徴

  • 転んでも危なくない和室は、子供を遊ばせるのに最適
  • 1階が店舗なので、騒音を気にしなくてよい
  • 広いベランダで、たくさんの洗濯物が干せる、など

母子家庭だけでなく高齢者の単身世帯、高齢の親と子の世帯、外国人など、サポートを待っている人が大勢います。単なる空室対策として入居を受け入れるのではなく、プラス思考で「その人たちにとっての価値」を見つけて提供すれば、入居者さんもオーナーも嬉しいアパートへと再生するでしょう。

事例3)単身女性向け「セキュリティ重視のマンション」

「女性の1人暮らしを応援し、親も安心できるおしゃれな物件」。28.15m²、1K、家賃6万8000円〜。実際に住む女性をターゲットにするのはもちろんですが、その親もターゲットにしています。

主な特徴

  • 防犯に配慮(カラーモニター付きインターフォン、オートロック、防犯カメラ複数設置)
  • 料理好きに嬉しい2口コンロ
  • 水回りの充実(浴室手前に洗濯機・浴室乾燥機設置)
  • 無料インターネット完備、など

ご紹介した事例の入居者さんは、全員「住みたい!」と指名してきた人たちで、常に空きを待つ人が十数人います。

「そんなのほしかった!!」そう思われる物件をつくろう

入居者さんたちの要望は、管理会社やオーナーからするとわがままと思えることもあります。しかし、冷静に考えると実現可能なことがいろいろあります。問題を見つけ、解決方法を考え抜くことで一般のビジネスは生き抜いてきました。

例えば、朝専用の缶コーヒーは、カフェインを少し多くしたものですが、消費者ニーズの絞り込みによって、新しい市場が誕生しました。よりおいしいコーヒーを追求したのではなく、人の行動と潜在ニーズから逆算して開発されたのです。まさに「そんなのほしかった!」商品となりました。今後、アパートもそうありたいものです。

昭和30年代、手塚治虫はじめ多くのマンガ家が集まった「トキワ荘」は、目標を同じくする人たちの夢の箱でした。そこは設備などを越えた価値がある、いわば昭和の「ファンが集まる物件」でした。

コンセプトや対象は多種多様でも、現代版「トキワ荘」のようなアパートをつくれたら素晴らしいと思いませんか? 入居者に価値を提供し、その対価として家賃を受け取る…オーナーとしての理想の一つはここにあるのではないでしょうか。2015年、単なる貸家業から脱却し「ファンの集まる物件づくり」に向けて動き出してみませんか?

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