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あなたが不動産投資を行う目的は何でしょうか。
この目的(ゴール)が明確でないと、他人の意見に左右されて、自分で決断できず、前に進むことができなかったり、後から「思っていたのと違う!」「こんなはずではなかった!」と後悔することになります。
目的(ゴール)が明確にできれば、自分で判断するときに自問自答すべきことは「目的(ゴール)に近づけるのか? それとも遠ざかってしまわないか?」となります。コンサルタントなどに相談するときも、この視点からアドバイスをもらうようにすると、短時間で的確なアドバイスが得られます。
そうはいっても、不動産投資を始めようと思った初期段階で、目的を明確に説明できない方がほとんどです。そこで過去の相談事例などから7つのパターンをご紹介します。
- 見栄を張りたい・かまって欲しい・富裕層と関わりを持ちたい
- 自分が死んだ後に家族が生活費で困らないようにしたい
- 節税したい(例:所得税・法人税・固定資産税・相続税)
- 資産形成・資産運用したい(例:株式や投資信託より効率よく資産を増やしたい・30年後に純資産1億円を手に入れたい)
- 副収入がほしい(例:手間なく月20万円の収入を増やしたい)
- 賃貸事業をしたい(例:不動産収入だけで生活したい・FIRE…経済的自由を手に入れたい)
- 転売事業をやりたい(例:不動産の転売で大きく利益を上げたい)
この時点での目的(ゴール)は、4級(7ステップ目)で見直しますので、暫定的な決定で大丈夫です。
ここで知っておくべきことは、実現の難易度です。上から順に難易度が上がります。つまり、1の見栄を張ることが最も易しく、7の転売事業が最も難しいものとなります。なお、多くの方が選ぶであろう、5の副収入でも難易度はかなり高いものです。
なぜなら、副収入…月額キャッシュフローが得られる物件は、家賃収入に比べて物件価格が安く(利回りが高い)、あなたと同じように取得したいライバルは多いものです。また、利回りが高い物件は、築年数が古いために融資が付きにくいので取得することが難しいのです。さらに取得後も、築年数の古さから修繕費が予想以上に掛かったり、エリアによっては満室経営を実現することが難しかったり、思っていたような利回りを出せないこともあります。
改めて確認しておきたいことは、不動産業界は、不動産投資を始めたい人が増えれば増えるほど潤うので、デメリットよりメリットを強調しすぎる傾向にあります。例えば、株式や投資信託より儲かり、起業で成功するほど難しくはない、などです。
確かに、アパート経営は外注の仕組み(不動産管理会社など)が整っていますので、ゼロから起業するよりも難易度は低いのかもしれません。ですが、投資金額が大きく、また借金もしますので、外注先をコントロールできないと目論見を大きく外し、大きな損失になることがあります。
ちなみに、副収入の目標金額は極めて重要です。例えば、月額10万円を目指すのと、月額50万円を目指すのでは、ゴールまでの時間はもちろん、リスクが異なります。また、概ね、月額20万円〜30万円あたりで、そこから所有物件を増やすのに資金調達ができなくなる「壁」があります。この壁を超える必要があるのか、ないのかで戦略が異なります。
この金額を決定する材料の1つに、ライフプランシミュレーションがあります。将来の収入や支出から貯金がどのように増減するのかをシミュレーションします。シミュレーションの方法としては以下の方法があります。
- 自分で勉強してExcelで作成する
- シミュレーションソフトを購入して自分で実施する
- ネット上で無料でシミュレーションできるサイトを使う
- ファイナンシャルプランナーに有料で実施してもらう
- 生命保険会社の営業マンに無料で実施してもらう
シミュレーションの結果から、何年後までに副収入を「いくら」手に入れなければいけない、と考えることができるようになります。また、視覚的にわかりやすいので、配偶者と共通認識を持つことができるのも、意外と重要なことになります(一般的には借金をすることに配偶者は嫌がります)。
なお、不動産投資を進めていったり、社会や家族など環境が変化したりして、ゴール(目的)が変わることは良くあることです。こればかりは仕方ありません。しかし、途中で難易度を上げる(節税ではなく資産形成したい・資産形成より副収入がほしい・月額10万円ではなく50万円ほしい等)のは、当初の難易度より更に難易度が上がります。
最後に。
実のところ、不動産投資は「持っている者」の投資です。例えば、地主・相続不動産を活用する人・成功している経営者や弁護士や医者・エリートサラリーマン(定義が難しいのですが例えば年収2,000万円を超えて確定申告が必要な人)などです。
歴史的には、アパート経営などを行うのは、こうした人たちでした。今でも金融機関によっては、上記のような人でないと門前払いのところは珍しくありません。
ところが、2000年代に入って、三井住友銀行が収益還元法…乱暴を承知でカンタンに説明すると、家賃収入で借入金を返済できるから担保評価とか個人属性(収入や資産背景など)だとかは、それほど重視しなくてもいいんじゃない? という考え方…で融資を拡大した結果、サラリーマン大家さんが市場に乱入しました。
その後、破綻する人が想定を超えたからか、収益還元法を重視する融資戦略からは撤退したようなのですが、不動産業界も金融業界もサラリーマン大家さんのインパクトはそれなりにあり、今も無視できない存在であり、サラリーマン大家さんに特化する戦略を取る企業も増えてきました。
そうはいっても、ここでいうサラリーマン大家さんは、年収は最低でも1,000万円以上で、上場企業のような安定した企業に長年勤めていて、年齢別平均貯蓄額を超える金融資産を持っている人たちの世界です。あなたがそうでない場合は、「持たざる者」の戦略を取る必要があります。
ただ、どのような戦略を取るのか考えることは、今の段階では早すぎます。恐らく、理解が追いつかずに混乱するだけで、前に進むことができなくなります。人生の中でやったことのないことを始めるときは、リスクのない範囲で少しずつ前に進むことです。進んでみて分かる世界があります。
ただし、注意したいことは、まだ初期の段階、勢いの小さいところで歩みを止めてしまうと、改めて前に進むことが困難になります。
ぜひ、今の段階では、毎日少しずつ行動して勢いをつける(=日常化させる)ことを意識しましょう。