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私道に面している物件なのに、私道持ち分を持っていない物件を買うとなると不安ですよね。
なぜなら、所有者であるあなた自身はもちろん、アパートの場合はその入居者までもが私道部分を通行するのを邪魔されたり、アパートの工事のために工事車両が出入りするのを邪魔されたり、上下水道やガス管の接続工事のために私道を掘削するのを禁じられたり、そんなトラブルになる恐れがあるからです。通常は、ほかの私道所有者から承諾が得られますので、そこまで大きな心配は要りません。不動産会社・建築会社・工事会社などに相談しましょう。
逆に言うと、万が一、その承諾が得られなければ、最悪、その私道を通行することができなかったり、上下水道工事やガス工事ができません。事実上の再建築不可物件となります。いえ、それ以下です。なお、建築基準法上の道路(市役所の建築課等で確認できる)であるなら、通行する権利はあります。また費用を払う必要もありません。しかし、それが相手に通じるのか(嫌がらせを止めてくれるのか)は、また別の話です。
とはいっても、私道持ち分のない物件はなかなかありません。所有者がどこかで困るので何とかしますし、そもそも困ることになるので最初からそうした物件は作りません。
それでも、どういうわけかゼロではないのです。または、困ったから今回、売却したのかもしれません。
こうした物件の場合、一般的には仲介会社やその手配による土地家屋調査士が、境界確定の流れで私道所有者(原則として全員)と承諾書を交わします。
通行掘削について承諾することと、売却したり相続したりしてもその相手に承諾を継承させる内容になっています。
購入時(売買契約時)に、この承諾書が揃っていれば、ひとまず安心です。場合によっては、契約後に手配を行い、決済までに用意するという内容のこともあるでしょう。
問題は、物件価格が低額すぎて、土地家屋調査士の手間代が出せないとなると、買主は自力(あるいは買主の費用負担で土地家屋調査士等に依頼)で何とかすることになります。
これは、本当に偏見といいますか、傾向があるとしかいいようがないのですが、やはり私道持ち分ゼロという特殊な物件を生み出す近隣住民は「いや〜参ったな〜」と思わざるを得ない住民が多いかな〜と感じます。
そんな物件で、とあることがきっかけで私道持ち分を購入する話になった会員さんから相談を受けました。
問題は金額をいくらにするのか? ですね。
まずは、固定資産税評価額を70%で割り戻した時価相当額1。この時価相当額に持ち分を掛けます。ちなみに、もともとの評価額は「道路」としての評価になっています。
ただ、この金額、買う方側は「高すぎる!」となります。ただの道路ですから。購入したところで再建築不可が再建築可になるような資産価値が上昇するのなら話は全く変わります。しかし、今回の場合は「だからといって家賃収入が増えるわけでもなく、売却価格にプラスになる期待も薄い」のです。
ですので、買う側とするなら、時価相当額から1/2、1/3、1/4と下げたいものです。
心情的に、ざっくり1/2(半分)は売主側に通用するイメージがあります。道路だから、家を建てられるわけじゃないから、と。
そこからさらに、1/3、1/4と持っていくには、もっと理論武装するのはもちろんのこと、売主の感情に配慮することを考えます。
ですので、売主が誰なのか(個人✖法人・一般法人✖宅建業者・地元民✖住んだことのない相続人)で方針が変わります。
個人相手で人間関係ができていれば「いいよ、いいよ。ちょっと小遣いになれば。でも面倒なのはそっちでやってくれ。」ってことで5万円・10万円は十分にあり得ます。
逆に、人間関係が悪ければ、時価の2倍3倍もあり得ます。「別にこっちは困っていなんだから!」となります。
法人相手ですと、最終決裁者は個人に準じます。決済者とは別の担当者が相手になる場合は、はっきり言って面倒なシゴトだなって思われています。ですので、お互いに話し合って、条件を調整することができます。
このときに、金額以外の面、例えば手続き(売買契約書作成や登記手続き)など、先方が慣れているなら先方にまかせて、不慣れならその逆にしたり、相手に何か金銭以外のメリットを提供できないか検討して打診したりといったことを考えられます。
先方からすると、私道持ち分の価格が1/2も1/3も1/4も同じです。あなたからすると「ぜんぜん違うよ!」となりますが、このギャップを上手く利用して1/4みたいな価格でまとめられるといいですね。
- 固定資産税評価額から時価相当額を割り戻す試算方法は、地域によっては実際の時価と大きく外れることがあります。しかし、最もわかりやすく費用も手間も掛からないので、ここでの説明に採用しました。ほかには、相続税路線価を使う・公示地価から類推する・不動産鑑定士に評価してもらうような方法があります。正確性を重視するなら鑑定評価ですが30万円くらい掛かります。費用負担は当然、今回、話を持ちかけた側になるでしょう。そして、仮に鑑定評価書があっても売る側が「そんなの知るか!」と言われたらそれまでです。裁判になれば採用される金額になりますが、2年くらいは膠着状態が続きます。だったら、今すぐ30万円払って解決したっていいかな?ってなりますよね。 ↩︎