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自宅を売却して利益が出た場合、3,000万円まで非課税になるという「3,000万円特別控除」をご存知でしょうか? 「いつか自宅を売却するかもしれない…」と考えている方なら、ご存知かもしれません。
住民票があればOK?3,000万円特別控除の落とし穴
特例を使うのなら「自宅とはつまり住民票がある家に限られるのでは?」と、そう思っていませんか? 確かに、自宅とは生活の本拠地であり、住民票があるのが一般的ですよね。
住民票がなくても大丈夫!? 3,000万円特別控除の真実
しかし、実は、税法では「住民票の有無」は3,000万円特別控除の要件には含まれていないのです。 つまり、住民票がなくても、条件を満たせば3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
クイズ. 全5問 3,000万円特別控除、受けられるか?
では、どのような場合に3,000万円特別控除が適用されるのでしょうか? 具体的な例を見ていきましょう。
問題① 居住中に売却
これは、まさに「自宅」の売却と言えるでしょう。
問題② 売却のために引っ越し、空き家にしてから1ヶ月後に売却
これも、売却目的が明確なので、問題なく「自宅」の売却とみなされるでしょう。
問題③ 引っ越し後、空き家にして3年後に売却
これは少し微妙です。税務署から「単なる空き家の売却なのでは?」と言われないか心配です。
問題④ 転勤で賃貸に引っ越し、3年後に空き家にして売却
一度賃貸に出しているため、「自宅」と言えるのか疑問が残ります。
問題⑤ 転勤で賃貸に引っ越し、3年後にオーナーチェンジで売却
これは、完全に「投資用不動産」とみなされる可能性が高く、3,000万円特別控除の対象外となるような気がします。
回答. 税法上の自宅=居住用財産3つのケース
税法では「自宅」ではなく「居住用財産」と表現し、以下の3つのケースを定義しています(措置法31条の3より)。
- 居住の用に供している家屋
- 居住の用に供されなくなった家屋 (居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限る。)
- この家屋及びその敷地の土地等
上記の定義に基づくと、先ほどの問題①は1に、問題②~⑤は2に該当し、3,000万円特別控除の対象となる可能性は十分にあります。
3,000万円特別控除を受ける際の3つの注意点
少し注意点といいますか補足があります。3つ紹介します。
- 更地の場合は1年以内に売却: 3,000万円特別控除の趣旨から、その対象の中心は「家屋」にあります。土地は家屋の付属です。ですので、更地にして売却する場合は、居住の用に供されなくなってから1年以内に売却する必要があります。
- 契約と決済のタイミング: 売却の時期は、契約時点(手付金の授受)で判断されます。決済(残代金の授受と引渡・登記手続き)が3年後の翌年になっても問題ありません。ただし、期限内に売却したことを証明するために、翌年に確定申告を行う必要があります。
- 空き家の3,000万円特別控除との違い: 空き家の売却にも3,000万円特別控除がありますが、適用要件や目的が異なります。とりわけ、こちらは相続による不動産である点が明確に異なります。
まとめ. 3,000万円特別控除を受けるためのポイント
3,000万円特別控除を受けるには、住民票の有無ではなく、「居住用財産」の定義を理解することが重要です。 自宅を引っ越してから3年後の年末までに売却(契約)すれば、3,000万円特別控除の対象となる可能性が十分におあります。
不動産会社などから「住民票があれば税金が安くなる」といったセールストークを鵜呑みにせず、正しい知識を身につけて、お得に自宅を売却しましょう。
租税特別措置法 第31条の3(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
居住用財産(次に掲げるものをいう。)を譲渡した場合において、その譲渡による所得(第28条第1項第1号に掲げる居住用財産の譲渡による所得に限る。)があるときは、その所得の金額から3,000万円を控除する。
- 居住の用に供している家屋
- 居住の用に供されなくなった家屋(居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限る。)
- 1.又は2.の家屋及びその敷地の土地(1.又は2.の家屋と一体として譲渡されるもので、その敷地の用に供されているものに限る。)