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アパート経営で収支がマイナスだと不安になります。
- 今後も収支がマイナスだと借金を返すのに給料や貯金を使うことになる。
- 固定資産税の◯回目の支払いが再来月だ。
- 売却したくても収支がマイナスの物件だと安く買い叩かれる。
収支が悪化するのを改善できないと、最悪は破産です。もちろん、そんなことになりたくはありません。アパート経営の収支がマイナスであることで、あなたの人生が左右されることがないようにしたいものです。
そこで、一般的には次のような対策を取ります。
一般的な収支改善の方法
- とにかく満室にする
- 経費の支出を抑える
- 借入金の金利や返済年数を見直す(借り換える)
- 節税する
とにかく満室にする
もし、空室があるなら満室にすることが先決です。詳細は、なぜ、空室が埋まらないのか? タイパで考える空室対策などの記事を参考にどうぞ。
経費の支出を抑える
経費の支出を抑えることと、あなたの時間や労力はトレードオフの関係です。
基本的に、経費を抑えたいとなれば、あなたの時間や労力が増えます。もし、昼間のお仕事があったり、別にやりたいことがあったりするなら、あなたの時給と比較して外部に委託するのか自分や家族が動くのか、比較検討しましょう。
具体的な経費は次のようなものがあります。金額の大きなものから見直します。
なお、借入金の返済と税金は別項目で検討します。
共用部の大規模修繕
屋根やバルコニーの防水・廊下や階段部分の床や壁や天井・郵便受けなどの設備など。取り急ぎ、機能的に問題がなければ先延ばしです。いつまでも先延ばしできないのですが仕方ありません。言い方は悪いのですが小修繕程度で誤魔化します。
退去後の原状回復リフォーム工事費
もっと改善すべきは、この費用です。細かいことを言うとキリがありませんので、すぐにできることは「相見積もりを取る」ことです。それも管理会社に「ほかのリフォーム業者にも相見積もりを取ってほしい」ということから始めます。
いずれは自分で別のリフォーム業者を探すして相見積もりを取ります。
意図するところ、管理会社に過剰な利益を奪われないようにすることです。
また、どこをどのようにリフォームするのか、コストパフォーマンスを重視した工事内容にすることを研究する必要があります。
恐らく「そういうことは管理会社が考えて提案してくれるはず」と思い込んでいることでしょう。うがった見方をすると、管理会社は工事費が高くなればなるほど儲かるのですから、コストパフォーマンスを重視した工事内容の提案に労力を掛けるインセンティブはありません。期待しすぎることのないようにします。
設備点検費
こちらも管理会社に相見積もりを依頼しましょう。自分で直接、点検業者に依頼することで管理会社の経費を省くことができます。ただし、点検時に現地立会いが必要だったり鍵のやりとりをしたりなど、あなたが対応すべき事項が増えることがあります。
水道光熱費
もし、共用部分の照明が蛍光灯のままならLED化は検討しましょう。物件の規模が大きいほど電気代の削減をきたいできます。工事費は掛かりますがリース契約にして分割することができます。工事費のリース代を考えても、毎月の電気代を削減できる可能性がありますので検討しましょう。
水道代は、入居者や近隣住民が勝手に洗車などで大量に使われていないかだけ確認しますよう。万が一悪用されている場合は対策を打ちましょう。
管理委託手数料
もし、ライトプランのような管理サービスが限定的になるけれど費用も安いプランがあれば検討しましょう。
今と同じサービス内容のまま値引き交渉するのは、管理会社によります。ただし、管理会社の心象は悪くなります。または業務対応の優先度が落ちます。
そこで、期間を限定して値引きしてもらえないか相談しましょう。正直に「収支がマイナスでこのままで破産しかねない。改善できるまで例えば1年間だけでも値引きしてくれないだろうか?」と相談を持ちかけます。無下に断られることはないでしょう。もし、まったく相手にされないようなら管理委託手数料の安い管理会社に変更しましょう。
ただし、管理委託手数料の安い管理会社は、別の部分(リフォーム費用など)で利益を出すことを考えます。管理委託手数料は安くなったけれど別の部分で経費が増えてしまった!なんて本末転倒なことにならないように注意したいものです。
定期清掃費
単純に値引き交渉をして清掃の品質が下がるのは稼働率に影響します。清掃の頻度(月4回を2回に減らす)なども同じです。その場合は、自分や家族で清掃業務を補うことを考えましょう。清掃状況の悪化は入居募集に影響もしますし、いま入居中の方たちにも悪影響が及びます。
入居募集費
これは削減すべき費用ではありません。むしろ多く払ってでも早く入居者を見つけてもらうべきものです。成功報酬ですから無駄になることはありません。例えば、半年間も空室が続く可能性があるなら、広告費を1ヶ月から2ヶ月に増やしても良いと考えます。
損害保険料
見直しのポイントは、まず鉄筋コンクリート造なら保険金額です。鉄筋コンクリート造は全焼することはありませんので、建物価格よりずっと低くて良いのです。次に、水災のリスクがないなら水災不担保にします。ただし、土砂災害は水災として扱われますので、川や海が近くになくても傾斜地の場合は不担保にしないようにします。
注意点は、汚損・破損です。こちらの免責金額(自己負担金額)を10万円などとすると保険料は下がりますが、軽微な汚損・破損でも保険金請求ができることで修繕費に充てやすくなりますので、これらは逆に出来る限り免責金額を1万円やゼロ円にすることで、こまめに建物調査をして保険金を請求して修繕するようにするほうが、コストパフォーマンスが高いです。
なお、保険会社本体も代理店も、建物は被災していませんか? 建物調査をして保険金を請求してくださいね! などとは言ってこないので、最低でも1年に1度はリフォーム会社等に破損・汚損状況を見てもらって保険金を請求しましょう。
借入金の金利や返済年数を見直す(借り換える)
まずは今の金融機関に率直に相談しましょう。金利を下げてくれませんか? と。ただし、返済が苦しいなどとは言わないことです。返済が滞るかもしれないと感づかれると逆効果です。
次に、借り換えを匂わせることです。他行に借り換えられるくらいなら少しくらいは金利を下げようか・・・となることがあります。
空室が目立つだけでなく、建物の老朽化が進んでいて、大規模修繕するタイミングでしたら、その工事費と合わせて同じ金融機関で借り換えることを相談してみましょう。例えば、残債5,000万円、返済期間の残りが15年だとしたら、大規模修繕の工事費1,000万円と合わせて、6,000万円を20年返済にしてもらうのです。大規模修繕で物件の価値を高められますので家賃も相場に戻して満室経営ができて、返済金額も下げることができれば、収支は大きく改善できます。
それでもダメなら本当に他行に借り換えを検討します。ただし、借り換えにも一時的な経費が掛かります。金利が下がることで毎月の返済金額は下がるとしても、一時的な支出が必要になりますので、早め対策すべきです。
もし、ほかからの収入を充ててでも返済に困るくらいの状況でしたら、正直に銀行に言いましょう。例えば、半年間は金利返済のみにしてくることがあります。この間に、空室対策など経営改善を進めましょう。ただし、金融機関からの信用に影響が出ます。具体的には追加融資は数年間は絶望的となります。
追加融資(物件を新たに買うようなこと)の必要がないのでされば、いっそのこと返済期間を伸ばしてもらいましょう。
節税する
ここでいう税金は大きく2種類です。固定資産税・都市計画税と、所得税と住民税(法人なら法人税と法人住民税)です。
固定資産税・都市計画税の節税はできるか?
もし、1つの物件で固定資産税等を少なくとも年間300万円を超えるくらいの規模で支払っているなら、見直しの余地はあります。ここで最低規模の話をしたのは、見直しをするのに経費が掛かることです。具体的には、不動産鑑定士などへの報酬です。固定資産税の評価は市町村が行いますがミスや過大評価されている可能性はあります。ここを改めてもらうのですが、そのための経費が必要です。経費の規模感としては30万円くらいはするものと考えると、年間100万円の固定資産税が5万円下がるとしても30万円の経費は出しづらいものです。
所得税と住民税を節税する
法人の場合は、法人税と法人住民税です。
もし、この税負担が昔と比べ大きいと感じているなら、それはデッドクロスの影響です。具体的には、減価償却費の減少です。例えば、木造で新築していたら22年で減価償却費がなくなります。設備を分けて償却していたなら15年で減価償却費がなくなります。すると、まとまった経費がなくなるので黒字幅が増えて税額も増えます。中古物件だと、もっと短くなります。
この現象はどうにもできません。ですので、こうした理解のある方は、資産の入れ替えと称して、定期的に物件を買い替えています。
また、リフォーム費用は償却資産ではなく単年度で全額経費計上します。これは税務上の扱いだったり税理士の対応だったりで調整が必要です。ただ単に税理士が税務調査に入られると面倒だからと、安全面(税務調査時に否認されることのないように)に配慮しすぎる税務申告をされるのも困りものです。
一例を挙げるなら、大規模修繕でまとまった工事費だとしても、新築時の状態に戻すだけ(原状回復)の工事なら、全額を単年度で経費計上できます。税理士に、このあたりの理解が足りないか、またはこちらの無理解に付け込んで楽な税務申告をしたり税務調査のときに面倒なことにならないように・・・と対応されないように注意したいものです。
もともとの目的は何でしたか?
収支がマイナスである物件の全てが悪とは限りません。
例えば、年間の収支はマイナス100万円だけれども、5年後に1億円の売却益が見込める(毎月含み益が増えている)ことを想定しているのなら、何ら問題はありませんよね。
同じように、相続税で1億円節税できるのなら、毎年100万円の赤字でも構わないはずです。
ほかにも生命保険の替わりだったり、将来の年金の補完のためだったり、余裕資金でやっているのなら問題はないはずです。
もちろん、こうした目論見通りなら良いのですが、そうならなかった場合が問題です。今回の方法を参考に改善していきましょう。
ただし、それだけあなたの時間や労力を浪費します。時間や労力を投下できたり、投下するに見合う結果が見込めるのなら良いのですが、そうではない場合は売却して手放すことも選択肢に入ります。
例えば、大手の査定価格+10%くらいなら、高く売却できる可能性があります。大手は出来る限り早く売却して売上を計上したがりますが、そうでない業者ならじっくり高く取り組むノウハウを駆使して売却できることが期待できます。
すぐにできるワン・アクション
例えば、管理会社から5万円を超える修繕費などの見積もりが出てきたら「ほかの業者さんからも見積もりを取ってもらえますか?」と返答しましょう。ただし、緊急性のある場合にはやめていおきましょう。緊急性の有無は、入居者さんに迷惑が掛かかるかどうかで判断します。